韓国では、普段使いの生活小物から装身具、婚礼や祭礼などに使われる小物まで
布で作れるものがたくさんあります。
生活に欠かせない布小物のひとつに、チュモニ(袋物)があります。
韓服にはポケットがありません。
お金からおやつまで、大切なものはチュモニに入れて常に持ち歩きました。
種類もたくさんあり、丸いトゥルチュモニ、
四角いサガッチュモニ、キチュモニなどをバックの代わりに使いました。
また、ヤッ(薬)、スジョ(匙と箸)、ポソンポ(靴下の型紙)、
アンギョン(メガネ)などを入れるケース代わりのチュモニもあります。
もうひとつ欠かせない布小物に裁縫用具があります。
シルペ(糸巻き)、パヌルコジ(針刺し)、コルム(指ぬき)、
チャチップ(ものさし入れ)、カウィチップ(はさみ入れ)、
インドゥパン(アイロン台)などが挙げられます。
封建時代の長かった韓国では、女性の行動、発言などが極端に制限されていました。
両班の子女は7歳になると閨房(キュバン)と言う
女性だけの部屋で生活するようになります。
そこで、母から裁縫の手ほどきを受けるのです。
チュモニ作りから始まり、チョガッポやいろいろな小物作りをマスターしたら、
ポソンや韓服といった家族の衣服まで作れるように教えられます。
そうなったら、一人前。同時の女性としては当たり前の嗜みであったのです。
いわば、嫁入り修行です。
これらの生活小物には、長寿を象徴する十長生、富貴をあらわす牡丹や蝶、
福を呼ぶこうもり、子宝に恵まれるように石榴、
福や寿などのおめでたい文字などを刺繍しました。
女性たちは一針一針に、家族への愛、幸福への願いを込めたのです。
現在も韓国では、生活の中でたくさんの布小物が使われていますが、
それらは全て人の手によって伝えられた、先人達の知恵と愛情が詰まった
第一級の文化財と言えるのではなでしょうか。
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